Rust と Go で書く WebAssembly:使い分けの指針
WebAssembly(Wasm)を書く際の言語選定で「Rust にすべきか Go にすべきか」という議論はよく起こります。どちらも Wasm をターゲットとしたコンパイルをサポートしていますが、特性は大きく異なります。本記事では実務での判断基準を整理します。
Rust の特性と向いているユースケース
Rust の最大の強みは、ランタイムや GC が存在しないことです。生成される Wasm バイナリは小さく(数十〜数百 KB)、コールドスタートが速く、GC ポーズによるレイテンシのスパイクが起きません。メモリ安全性はコンパイル時に保証されるため、C/C++ に匹敵する性能を安全に発揮できます。
エッジコンピューティング(Cloudflare Workers、Fastly Compute)
高頻度・低レイテンシが求められる処理(画像変換、暗号化、パーサー)
バイナリサイズを最小化したい組み込み環境
セキュリティクリティカルな処理(Rust の型システムがバグを防ぐ)
デメリットとしては、学習コストが高いこと、エコシステムの Wasm 対応ライブラリがまだ限られていること、コンパイルが遅いことが挙げられます。チームに Rust 経験者がいないプロジェクトでは導入コストを慎重に評価すべきです。
Go の特性と向いているユースケース
Go は `GOARCH=wasm GOOS=js` または TinyGo を使って Wasm にコンパイルできます。標準の Go は GC を持つため生成バイナリが大きく(2MB 以上になることも)、エッジ環境では TinyGo の使用が現実的です。一方で、Go の並行処理モデル(goroutine)やシンプルな文法は生産性に優れており、サーバーサイドの Wasm 実行環境(WASI)では十分に使えます。
WASI ベースのサーバーサイド実行(wasmtime、WasmEdge)
既存の Go コードベースを Wasm に移植したいケース
バックエンドチームが Go に習熟しており、学習コストをかけられないケース
並行処理を含む複雑なビジネスロジックを Wasm で動かしたいケース
判断フローチャート
実務では次の順番で判断しています。まず「エッジで動かすか、サーバーで動かすか」を決めます。エッジなら Rust 一択です。次に「チームに Rust 経験者がいるか」を確認します。いなければ Go(TinyGo)を選び、学習コストを抑えます。最後に「バイナリサイズが制約になるか」を確認します。制約がなければ Go でも十分です。
まとめ
Rust と Go のどちらが優れているかという問いに一般解はありません。エッジ・高パフォーマンス・小バイナリが必要なら Rust、既存チームの生産性・移植しやすさを優先するなら Go が有力な選択肢です。NodeFlare では両言語で書かれた Wasm モジュールのホスティングをサポートしており、実際の運用ノウハウも蓄積しています。
